麻疹(はしか)対応ガイド
保育園・幼稚園・学校での対処法
はじめに
麻疹(はしか)は「空気感染する熱帯雨林の猛獣」とも言われるほど感染力が強い疾患です。しかし、適切な対応と予防策を知っておけば、その猛威から子どもたちを守ることができます。このガイドでは、園や学校で麻疹患者が発生した際の対応方法をわかりやすくご紹介します。
教育機関での麻疹発生時の対応フローチャート
麻疹患者発生!最初にすべきこと
1.即時連絡網を始動させましょう
- 校医・園医に相談
- 監督部署への連絡
- 市区町立の幼稚園・学校 → 教育委員会
- 保育所 → 福祉課
- 私学 → 私学振興室
- 保健センター・保健所への報告
2.二つの緊急対策を同時に進めましょう
- 感染者の隔離:麻疹の「拡散防止ダム」を築く
- 周囲の免疫状況確認:「防御の壁」を固める
同じクラスに麻疹患者が出たら
1.全員の免疫状況をチェック
- 母子手帳等で確認事項:
- 麻疹の罹患歴はあるか
- ワクチン接種歴(MR・MMR ワクチン含む)はあるか
2.免疫がない子どもへの対応
- 速やかにかかりつけ医に相談し、ワクチン接種を検討
3.全員の健康観察を徹底
- 2 週間程度、毎朝の検温を指導
- 37.5 度以上の発熱があれば登校せず、医療機関に受診
- 受診時は「クラスに麻疹患者がいる」ことを事前に電話連絡
特殊なケース別対応法
保育所で 0 歳児が麻疹患者と接触した場合
生後 6 カ月までの赤ちゃん
- お母さんに麻疹の免疫があれば安心度 UP
- お母さんに免疫がなければ母子ともに要注意
生後 6 カ月以上の赤ちゃん
- 母親からの免疫は減少している時期
- 患者との接触から 72 時間以内のワクチン接種が効果的な場合も
- 園医またはかかりつけ医に速やかに相談を
大学生の教育実習と麻疹
実習前の準備
- 母子手帳でワクチン 2 回接種を確認
- 不明確なら血液検査で免疫確認も一案
- 免疫不十分なら実習前にワクチン接種を
大学で麻疹が流行している場合
- 麻疹患者との接触後は2~3週間、実習参加を見合わせる
- 毎朝の検温と健康観察を徹底
- 発熱時は解熱剤を使って無理に実習参加せず、自己隔離を
終息宣言の目安
最後の患者との接触から 4 週間(麻疹潜伏期間の約 2 倍)、新たな患者が発生しなければ、専門家と相談の上で終息宣言が可能です。
なぜ教育機関での対応が重要なのか
- 麻疹の感染力は非常に強く(感染率 95%以上)、閉鎖空間での感染効率が高い
- 小児は免疫を持たない割合が高く、集団生活の場では感染連鎖が起きやすい
- 迅速な対応で地域全体への感染拡大を防ぐことができる
- このガイドは国立感染症研究所感染症情報センターの「学校における麻しん対策ガイドライン」を基に作成しています。詳細は各自治体の保健所や教育委員会にお問い合わせください。
- 当クリニックでは麻疹に関するご相談・予防接種を承っております。不安なことがございましたら、お気軽にご連絡ください。