冠攣縮性狭心症とは?
~知っておきたい原因・検査・治療~

朝方の胸の痛みに要注意!
知っておくべき狭心症の話

皆さんは朝起きた時に突然、胸が締め付けられるような痛みを感じたことはありませんか?
それは単なる寝違えではなく、「冠攣縮性狭心症」かもしれません。

狭心症とは、心臓の筋肉に栄養を運ぶ「冠動脈」という血管が細くなり、

心臓が酸素不足に陥る病気です。放置すると命に関わる可能性もあるため、

早期発見・早期治療が大切です。

今回は、特に日本人に多いと言われる「冠攣縮性狭心症」について詳しくご紹介します。

狭心症って何?心臓のSOSサイン

心臓は24時間365日、休むことなく働き続ける驚くべき臓器です。そんな心臓に酸素と栄養を届けているのが「冠動脈」。この冠動脈には右冠動脈と左冠動脈があり、左冠動脈はさらに左回旋枝と左前下行枝に分かれています。

これらの血管が何らかの理由で狭くなると、心臓は「酸素が足りない!」というSOSを発します。それが狭心症の胸痛です。

狭心症の発作とは?

狭心症の典型的な症状は「発作」です。これは5〜10分程度続く、胸がギュッと締め付けられるような痛みのこと。

痛み方は人それぞれですが、共通するのは「一過性」であること。つまり、時間が経つと自然に症状が落ち着くのが特徴です。しかし、この痛みは心臓からの重要なメッセージ。決して無視してはいけません。

冠攣縮性狭心症の正体

狭心症には大きく分けて「冠攣縮性狭心症」と「労作性狭心症」の2種類があります。今回はまず、比較的若い世代に多い冠攣縮性狭心症についてご説明します。

血管のけいれん?冠攣縮性狭心症のメカニズム

冠攣縮性狭心症は、血管の壁を作っている「平滑筋」という筋肉が突然けいれんを起こすことで発生します。まるで血管自体が「ギュッ」と締まるようなイメージです。

このけいれんにより冠動脈の一部が一時的に狭くなり、心臓に十分な血液が届かなくなって発作を引き起こします。

特徴は「朝方の発作」

冠攣縮性狭心症の大きな特徴は、主に朝方に突発的に発作が起こること。運動などが引き金になる労作性狭心症とは異なり、安静にしている時でも発作が起きる点が特徴的です。

また、日本人に多いことも知られており、いわば「日本人に多い狭心症」と言えるでしょう。

なぜ起こる?冠攣縮性狭心症の原因

実は冠攣縮性狭心症の原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、以下の2つが関係していると考えられています:

1.前夜の飲酒が朝の発作を誘発?

多くの患者さんが、「前の晩にお酒を飲んだ翌朝に発作が起きる」と報告しています。アルコールの代謝物質が血管のけいれんを引き起こす可能性が指摘されています。

2.寒さが血管を縮める?

冬など寒い季節に発作が増え、暖かくなると減る傾向があります。寒冷刺激が血管のけいれんを誘発しやすいのかもしれません。

こんな方は要注意!患者さんの特徴

冠攣縮性狭心症は、労作性狭心症に比べて若い世代に多い狭心症です。特に40〜50歳代の働き盛りの方に多く見られます。

つまり、「まだ若いから大丈夫」という油断が最も危険なのです。特に日本人は欧米人に比べて罹患率が高いので、注意が必要です。

どうやって調べる?検査方法

狭心症が疑われる場合、まずは冠攣縮性か労作性かを見極める必要があります。基本的な検査には以下のようなものがあります:

  • 心電図検査
  • 心エコー検査
  • ホルター心電図(24時間心電図)
  • 血液検査

特にホルター心電図で発作時の心電図変化と症状が一致していれば、診断の大きな手がかりになります。

場合によっては、カテーテル検査で冠動脈の痙攣を誘発するテストを行うこともあります。これにより、どの血管がけいれんを起こしているのかを特定できます。

治療は薬だけでOK!

冠攣縮性狭心症の朗報は、手術などの侵襲的な治療が必要ないことです。適切な薬の服用だけで症状をコントロールできます。

主に使用されるのは「カルシウム拮抗薬」と呼ばれるお薬。これは冠動脈の平滑筋に作用して、けいれんを防ぐ効果があります。場合によっては硝酸薬なども併用しますが、基本的には内服薬だけで治療が可能です。

適切な治療を続ければ、発作を予防でき、予後も比較的良好です。大切なのは、発作に早めに気づいて診断を受けることです。

まとめ:早期発見が決め手

冠攣縮性狭心症は、特に日本人に多い狭心症の一種です。朝方の胸痛が特徴で、40〜50代の比較的若い世代に多く見られます。

原因はまだ完全には解明されていませんが、前夜の飲酒や寒冷刺激が関係していると考えられています。

幸いなことに、薬物療法だけで効果的に治療でき、予後も良好です。しかし、そのためには早期発見・早期治療が欠かせません。

  • 胸の痛みを感じたら、「たまたまだろう」と軽視せず、ぜひ一度当クリニックにご相談ください。あなたの心臓の健康を守るお手伝いをさせていただきます。