心房細動
その原因と症状、予防法について
心臓の小さな乱れが引き起こす大きな問題
皆さんは、胸がドキドキする経験をしたことがありますか?
恋愛や緊張だけでなく、心臓自体の不調でもドキドキすることがあります。
今回は、そんな「ドキドキ」の原因となることもある「心房細動」についてお話しします。
心房細動って何? ― シンプルな説明
心房細動は、心臓の上部(心房)が震えるように不規則に動いてしまう状態です。
健康な心臓なら「トクン、トクン」と規則正しく鼓動していますが、心房細動では「トクトク…トン…トクトクトク…」というように、まるでジャズのような不規則なリズムになります。
想像してみてください。オーケストラでは、指揮者が一定のテンポで音楽を導きます。心臓では「洞結節」という部分がこの指揮者の役割を果たしています。心房細動は、この指揮者の指示を無視して、楽団員(心房の筋肉)がバラバラに演奏を始めたような状態なのです。
なぜ心配する必要があるの?
心房細動自体は、直接命に関わることは少ないです。でも、放っておくと2つの大
きな問題を引き起こす可能性があります:
1.脳梗塞のリスク
心房が震えると血液の流れが悪くなり、血の塊(血栓)ができやすくなります。この血栓が脳に流れていくと、脳の血管を詰まらせて脳梗塞を引き起こします。心房細動がある方は、ない方と比べて約 5 倍も脳梗塞のリスクが高くなるんです!
特に危険なのは左心耳(さしんじ)という部分。ここで作られた血栓は、まるで小さな時限爆弾のように、いつ血流に乗って脳へ向かうか分かりません。
2.生活の質の低下
「ドキドキする」「息切れがする」「疲れやすい」といった症状で、日常生活が思うように送れなくなることもあります。長期間続くと心不全のリスクも高まります。
心房細動の症状 - あなたは大丈夫?
心房細動の症状は人それぞれです。次のような症状がある方は要注意です:
- 突然の動悸(特に安静時や就寝時)
- 息切れや息苦しさ
- 胸の不快感や痛み
- めまいやふらつき
- 異常な疲労感
でも、実は約 4 割の方は無症状です。「年のせいだろう」と思って放置してしまうケースも少なくありません。
心房細動になりやすい人は?
心房細動は誰にでも起こりえますが、特に以下の条件に当てはまる方は注意が必要です:
- 高齢の方(年齢とともにリスクは上昇)
- 男性(女性より 1.5 倍リスクが高い)
- 高血圧の方
- 糖尿病の方
- 肥満の方
- 睡眠時無呼吸症候群の方
- 喫煙者
- お酒をよく飲む方
- ストレスを抱えている方
心房細動を見つけるには?
心房細動は、次のような方法で発見されます:
持続性の心房細動
定期的な健康診断や通院時の心電図検査で発見できることが多いです。年に 1 回 は心電図検査を受けることをお勧めします。
発作性の心房細動
症状が出たり消えたりするタイプは発見が難しいです。当クリニックでは、小型の心電計(イベントレコーダー)を貸し出して、3日間~1週間、ご自宅で記録していただくサービスを行っています。
自分でできる予防と早期発見
心房細動は完全に予防することは難しいですが、リスクを下げることはできます:
1.生活習慣の改善
- 禁煙する
- お酒は適量に
- 適正体重を維持する
- 定期的に運動する
- 高血圧や糖尿病をしっかり管理する
2.自己チェック
- 家庭用血圧計で脈の乱れをチェック
- 脈が飛んだり、極端に速かったりしたら医師に相談
- 動悸などの症状が出たら、すぐにメモを取る
心臓の仕組み - ちょっと専門的なお話
心臓は 4 つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)からなる精密なポンプです。酸素の少ない血液を肺に送り、酸素を取り込んだ血液を全身に送る役割を担っています。
健康な心臓では、右心房の上部にある「洞結節」から規則正しく電気信号が発生し、心房から「房室結節」という中継所を通って心室へと伝わります。これにより心臓全体が協調して動き、効率よく血液を送り出すことができるのです。
心房細動では、この電気信号の発生や伝導に問題が生じ、特に左心房の肺静脈の付け根から異常な信号が発生しやすくなります。その結果、心房は毎分 300~600 回も震え、心室も不規則に動くようになるのです。
まとめ - 大切なポイント
- 心房細動は誰にでも起こりうる不整脈で、加齢とともに増加します
- 自覚症状がなくても、脳梗塞などの重大な合併症のリスクがあります
- 定期的な健康診断と生活習慣の改善が予防と早期発見の鍵です
- 少しでも気になる症状があれば、遠慮なく当クリニックにご相談ください
- 当クリニックでは心房細動の診断から治療まで、患者さん一人ひとりに寄り添ったケアを提供しています。
ご不安なことがありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。