食物アレルギー
やさしく理解する「からだの誤報対応」
はじめに ― 食物アレルギーってなに?
皆さんは「誤報」という言葉をご存知ですか?メディアが間違った情報を流してしまうことですね。実は、私たちの体の中でも「誤報対応」が起きることがあるんです。それが「食物アレルギー」なのです。
食物アレルギーとは、本来なら「味方」であるはずの食べ物を、体が「敵」と勘違いして過剰に反応してしまう現象です。まるで、「この人は不審者です!」というニュース速報が誤って流れ、町中がパニックになるようなものです。
食物アレルギーの主な犯人たち
私たちの身の回りには、様々な「容疑者」がいます。代表的なのは:
- たまご探偵 ― 最も多くの子どもたちを「アレルギー事件」に巻き込む食品
- ミルク刑事 ― たまごと並んで多くの「事件」を起こす牛乳タンパク質
- 小麦怪人 ― パンやうどんなどに潜む「怪しい人物」
このほかにも、ピーナッツ、エビ・カニなどの甲殻類、果物など、様々な食品が「容疑者リスト」に名を連ねています。
どんな「事件」が起きるの?
食べ物が体内に入ると、アレルギーがある方は「事件」が発生します:
指令本部(免疫系):
「緊急事態発生!侵入者あり!全部隊、反撃開始!」
すると、体のあちこちで次のような「混乱」が起きます:
- 皮膚に赤い発疹やかゆみ(まるで防衛隊が非常ベルを鳴らしているよう)
- くしゃみや鼻水(侵入者を吹き飛ばそうとする作戦)
- せきやゼーゼー(呼吸器での緊急封鎖作戦)
- お腹の痛みや嘔吐、下痢(侵入者を早く追い出そうとする大掃除作戦)
そして最も危険なのが「アナフィラキシー」と呼ばれる全身総動員体制。血圧が下がり、意識がもうろうとするなど、命に関わることもあります。
子どもの場合、成長とともに「和平」が訪れることも
朗報です!子どもの食物アレルギー、特に卵・牛乳・小麦については、成長とともに 7〜8割のお子さんで「和平交渉」が成立し、症状が治まっていきます。体と食べ物が「誤解を解いて」仲良くなるんですね。
一方で、ナッツ類や魚介類のアレルギー、また学童期以降に始まったアレルギーは、「交渉が難航」することが多く、大人になっても続くことがあります。
どうやって「犯人」を特定するの?
アレルギーの調査には専門の「捜査官」(お医者さん)が必要です。主な「捜査方法」は:
1.血液鑑識(血液検査)
体内の「不審者情報」(IgE 抗体)の量を調べます。ただし、これだけでは「有罪」を確定できません。容疑者がいるというだけで、実際に「事件」を起こすかは別問題です。
2.皮膚スパイ活動(皮膚プリックテスト)
容疑者情報(アレルゲン液)を皮膚に垂らし、その反応を観察します。これも「参考証拠」に過ぎません。
3.実地検証(食物経口負荷試験)
最も確実な「証拠集め」です。実際に少量の容疑食品を食べて、体の反応を観察します。ただし、重い症状が出る危険もあるため、必ず病院で行います。
治療法 :「平和条約」を結ぶには?
基本戦略:回避作戦
最も安全で確実な方法は、アレルギーの原因となる食品を避けること。でも、必要以上に避けると栄養不足になることも。専門医と相談して、必要最小限の「回避ライン」を決めましょう。
新しい試み:和平交渉(経口免疫療法)
一部の専門医療機関では、少しずつ原因食品を食べて体を慣らしていく「和平交渉」を試みています。これは「体と食べ物の対話」を根気よく続け、お互いを理解していく過程です。ただし、リスクもあるため、必ず専門医の指導のもとで行います。
緊急事態に備えて
もし過去に重いアレルギー反応を起こしたことがある場合は、「緊急対応キット」(アドレナリン自己注射器)の携帯が必要になることもあります。これは、いざというときの「救急隊」として、症状を抑える効果があります。
予防できるの?
食物アレルギーの予防法については研究が続いていますが、驚くべきことに、最近の研究では「早めの接触」が効果的という報告も。かつては「危険な食品は遅らせる」という考え方でしたが、今では適切な時期に適切な量で食べることが推奨されています。
最後に
食物アレルギーは「体の誤解」から始まりますが、正しい知識と専門医のサポートがあれば、上手に付き合っていくことができます。
不安なことがあれば、いつでも当クリニックにご相談ください。
私たちは、お子さんとご家族の「平和な食卓」を全力でサポートします。