子どもの急性中耳炎
保護者のためのやさしいガイド

「ママ、耳が痛い」その言葉の裏側にあるもの

お子さんが突然、夜中に「耳が痛い」と泣き出したことはありませんか?
あるいは、何も言えない小さなお子さんが耳を触りながら不機嫌になっていませんか?
その原因は意外と身近な「急性中耳炎」かもしれません。

中耳炎って何?小さな耳の中の大きなドラマ

「中耳炎」というと難しく聞こえますが、実はとてもシンプルなものです。「中耳」という場所に「炎症」が起きている状態なんです。

では、その「中耳」とはどこなのでしょう?

耳の穴から入っていくと、行き止まりに「鼓膜」という薄い膜があります。この鼓膜、太鼓の皮のように音が当たると振動する大切なパーツです。そして、その鼓膜の向こう側にある空間が「中耳」です。

中耳炎になると、この鼓膜が赤く腫れたり、膨らんだりします。お医者さんが耳の中をのぞき込むのは、この鼓膜の様子を確認するためなんですよ。

驚きの侵入経路!細菌はどこから来るの?

ここで不思議な疑問。細菌はどこから中耳に入り込むのでしょう?

「耳の穴から入るんじゃないの?」

実は違うんです!正解は「鼻から」です。

なぜなら、鼓膜は細菌を通さない番人のような役割をしているから。でも、中耳と鼻の間には「耳管」という秘密の通路があります。風邪をひいて鼻の中で細菌が増えると、この耳管を通って中耳に忍び込んでしまうのです。

子どもの耳管は大人よりも短く、水平に近い角度になっています。さらに柔らかいため、細菌にとっては侵入しやすい条件が揃っているのです。これが子どもに中耳炎が多い理由の一つです。

こんな症状に要注意!中耳炎のサイン

急性中耳炎のサインはいくつかあります:

  • 風邪を引いた1〜2週間後に発症することが多い
  • 「耳が痛い」と訴える(特に夜間に痛みが強くなることも)
  • 耳を触る回数が増える
  • 機嫌が悪くなる、泣く
  • 発熱がある
  • ひどい場合は耳から液体(耳だれ)が出ることも

赤ちゃんや小さなお子さんは「耳が痛い」と言葉で伝えられないので、ぐずったり泣いたりするサインを見逃さないようにしましょう。

中耳炎の種類 〜すぐ治るものから長引くものまで〜

中耳炎にはいくつかのタイプがあります:

  • 単純性中耳炎:1〜2 週間で自然に治まる一般的なタイプ
  • 反復性中耳炎:半年で 3 回以上、1 年で 4 回以上繰り返す頑固なタイプ
  • 遷延性中耳炎:3週間以上症状が続く長引くタイプ
  • 難治性中耳炎:適切な治療を行っても良くならないか悪化する厄介なタイプ
  • 滲出性中耳炎:痛みや熱はないけれど、中耳に液体が溜まって聞こえにくくなるタイプ

なぜ子どもに多いの?その理由は?

子どもに中耳炎が多い理由はいくつかあります:

  1. 耳管の構造が未熟: 子どもの耳管は短く水平で、細菌が侵入しやすい
  2. 免疫力がまだ発達途上: 細菌やウイルスと戦う力がまだ十分でない
  3. 保育環境: 保育園や幼稚園で風邪をもらいやすい

驚くことに、3 歳までに約 85%の子どもが一度は急性中耳炎を経験すると言われています!

診断と治療 〜早めの対応が肝心〜

診断方法

中耳炎の診断には、お医者さんが特殊な器具で耳の中をのぞいて鼓膜の状態を確認します。また、お子さんの生活環境や予防接種歴なども大切な情報です。

治療方法

治療は症状の重さによって異なります:

軽症の場合:
  • 自然に治ることも多いので、痛み止めなどで様子を見ることもあります
  • 冷やすことで痛みを和らげることができます
中等度以上の場合:
  • 抗菌薬(抗生物質)を使用することがあります
  • 重症の場合は鼓膜切開が必要なこともあります

大切なのは、症状が 3 日以上続く場合や、お子さんの機嫌が特に悪い場合は早めに医療機関を受診することです。

予防のポイント 〜繰り返さないために〜

急性中耳炎は一度治っても繰り返すことがあります。予防のためにできることは:

  • 風邪予防 (手洗い・うがいの習慣づけ)
  • 予防接種を受ける(肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチン)
  • 受動喫煙を避ける(タバコの煙は耳管の機能を低下させます)

最後に

お子さんの「耳が痛い」というサインを見逃さないでください。特に風邪をひいた後に機嫌が悪くなったり、耳を触る仕草が増えたりしたら、中耳炎を疑ってみましょう。

当クリニックでは、お子さんの耳の健康を守るため、丁寧な診察と適切な治療を心がけています。ご心配なことがあれば、お気軽にご相談ください。

お子さんの小さな耳の中で起きている「中耳炎」というドラマ。その仕組みを知ることで、適切な対応ができるようになります。お子さんの健やかな成長のために、ぜひ参考にしてくださいね。