蜂窩織炎(ほうかしきえん)について
蜂窩織炎は一見難しい名前の病気ですが、実は私たちの身近に潜む皮膚の感染症です。この記事では、蜂窩織炎の原因から症状、治療法まで、分かりやすくご紹介します。
蜂窩織炎って何? —皮膚の下で静かに広がる炎症—
皮膚にできた小さな傷。それは時に、思わぬトラブルの入り口になることがあります。蜂窩織炎は、そんな小さな傷口から細菌が侵入し、皮膚とその下の脂肪組織に炎症を引き起こす感染症です。
蜂の巣のように炎症が広がることから「蜂窩織炎」と名付けられたこの病気は、特に足やふくらはぎに発症することが多いのが特徴です。
こんな症状に要注意!
蜂窩織炎になると、以下のような症状が現れます:
- 患部が赤く腫れ上がる
- 触ると熱感と痛みがある
- 徐々に赤みと腫れが広がっていく
- 歩くのが痛くて困難になることも
症状が進行すると、次のような全身症状が現れることもあります:
- 発熱や悪寒
- 強い倦怠感
- 頭痛
これらの症状が見られたら、早めに医師に相談しましょう。
意外な侵入経路 —身近な細菌が引き起こす感染—
蜂窩織炎の主な原因菌は、私たちの肌に普段から存在する「レンサ球菌」と「ブドウ球菌」です。これらの菌は通常は害を及ぼしませんが、皮膚のバリアが破れると内部に侵入して炎症を引き起こします。
侵入経路となるのは、こんな傷口:
- 小さな引っかき傷
- 虫刺され
- やけど
- 水虫などによる皮膚のひび割れ
- 過度な乾燥肌による皮膚のひび
驚くことに、目に見えるような大きな傷がなくても発症することがあります。特に糖尿病や免疫力が低下している方は注意が必要です。
レンサ球菌 vs ブドウ球菌 ―二大原因菌の特徴—
レンサ球菌
特殊な酵素を持つレンサ球菌は、皮膚の中で炎症を素早く広げる特徴があります。
A群レンサ球菌が蜂窩織炎の主な原因菌です。
ブドウ球菌
特に黄色ブドウ球菌は強い毒素を作り出し、蜂窩織炎の他にも食中毒や様々な皮膚感染症を引き起こします。近年では抗生物質に耐性を持つメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染も増えています。
診断と治療 ―早期発見が重要—
蜂窩織炎は特徴的な症状があるため、医師の診察で診断されることが多いですが、症状の程度に応じて以下のような検査を行うこともあります:
- 血液検査:炎症の程度を調べる
- 画像検査:皮下組織の状態を確認
- 培養検査:原因菌を特定
治療は主に抗菌薬による治療が行われます。多くの場合、適切な治療により数日10 日程度で回復します。重症の場合は入院して点滴による抗菌薬治療が必要になることもあります。また、皮膚の下に膿がたまっている場合は、切開して膿を出す処置が必要になることもあります。
日常生活での予防法 ―小さな心がけで大きな予防―
蜂窩織炎の予防は、日常生活の中の小さな心がけから始まります:
- 傷ができたらすぐに洗浄
小さな傷でも、清潔な水で洗い流すことが大切です。
- 皮膚の保湿を心がける
乾燥によるひび割れは細菌の侵入口に。毎日の保湿ケアが重要です。
- 水虫は早めに治療
足の指の間の水虫は蜂窩織炎の原因になりやすいので、早めに治療しましょう。
- 長袖・長ズボンで保護
アウトドア活動では肌の露出を減らし、虫刺されや擦り傷を予防。
- 糖尿病などの基礎疾患の管理
基礎疾患をお持ちの方は、特に足のケアに注意しましょう。
まとめ ―気づきが命を守る―
蜂窩織炎は早期に適切な治療を受ければ、多くの場合問題なく回復します。しかし、放置すると重症化して敗血症などの命に関わる状態に進行することもあります。
皮膚の赤み、腫れ、痛みなどの症状が現れたら、自己判断せずに早めに当クリニックにご相談ください。専門的な診断と適切な治療を提供し、皆様の健やかな肌と健康をサポートいたします。
- 当クリニックでは、皮膚トラブルの早期発見・早期治療に取り組んでいます。些細なことでもお気軽にご相談ください。