BCG ワクチン
あなたとお子様のための安心ガイド
BCG ってなに?知っておきたい基礎知識
「BCG」という言葉を耳にしたことはありますか?赤ちゃんの上腕に特徴的な跡を残すあのワクチンです。実は BCG という名前には素敵な歴史があります。
BCG とは、フランスのパスツール研究所で研究していたカルメット(Calmette)とゲラン(Guérin)という二人の科学者の名前から取られた「Bacille Calmette-Guérin(カルメットとゲランの菌)」の略称なんです。彼らは牛に感染する結核菌を長い時間をかけて弱毒化し、1921 年に世界で初めて新生児への接種に成功しました。
日本では 1924 年にこの菌が導入され、以来、私たちの国の子どもたちを結核から守り続けています。さらに誇らしいことに、1965 年には日本の菌株(Tokyo 172株)から作られた BCG ワクチンが WHO(世界保健機関)の国際基準品に指定されました。世界中で使われている BCG の品質基準を日本が支えているのです!
小さな注射で大きな守り:BCG の効果とは?
「結核はもう過去の病気じゃないの?」と思われるかもしれませんが、実は今でも世界中で毎年約 1000 万人が発症し、150 万人以上が命を落としている深刻な感染症です。日本でも年間約 1.3 万人が新たに結核を発症しています。
BCG ワクチンの効果は科学的に証明されています。国際的な研究によると:
- 乳幼児期の BCG 接種で結核の発症を 52~74%予防
- 特に重篤な髄膜炎や全身性の結核は 64~78%も予防可能
- 一度の接種で 10~15 年程度の効果が持続
これは非常に印象的な数字です。実際、日本の結核患者発生率は米国の約 4 倍にも
かかわらず、子どもに限っては米国の発生率を下回っています。この違いは、米国では広く接種されていない BCG ワクチンの効果だと考えられています。
タイミングが大事:いつ接種するのがベスト?
現在の日本では、BCG ワクチンは生後 1 歳になるまでに接種することになっています。その中でも標準的な接種時期は生後 5~8 ヶ月の間です。
なぜこの時期なのでしょうか?以前は生後 6 ヶ月までの接種とされていましたが、他のワクチンとのスケジュール調整や、非常に稀ではありますが副反応として報告された骨炎への配慮から、現在の時期に設定されました。
ただし、地域によっては結核の発生状況に応じて、より早い時期に接種を勧める場合もあります。お住まいの自治体からの案内に従って、確実に接種を受けることが大切です。
安全性と副反応:知っておきたいこと
BCG は世界中で長年使われてきた安全性の高いワクチンです。それでも、すべての医療行為と同じく、いくつかの副反応について知っておくことは大切です。
一般的な反応(心配ありません):
- 接種後2週間ほどで針の跡に赤みや硬いしこりができる
- 5~6週間後に小さな膿や痂皮(かさぶた)ができる
- リンパ節の腫れ
稀な副反応:
- 骨炎(約9万接種に1件程度)
- 全身性 BCG 感染症(非常に稀)
2013 年度は約 90 万人が接種を受け、報告された副反応は 174 件でした。その中でも重篤な副反応は極めて稀です。
接種後のケア:こんなときどうする?
接種後の跡がジクジクしている場合、多くは自然に治りますが、以下の場合は医療機関への相談をおすすめします:
- 数ヶ月以上ジクジクが続く
- 針の跡が互いにつながって大きな潰瘍になる
また、「コッホ現象」と呼ばれる反応が稀にあります。これは結核菌にすでに感染している方に BCG を接種した場合、通常より早く(多くは 3 日以内)に強い反応が出る現象です。このような症状が見られた場合は、医療機関に相談してください。
よくある質問
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腕に跡が残るのが嫌なので、目立たない場所に接種できませんか?
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BCG ワクチンは法律で上腕外側の中央部に接種することと定められています。
他の場所への接種は認められていません。また、肩に接種するとケロイドができやすいという報告もあるため、定められた場所での接種をお願いしています。
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1歳までに接種できなかった場合はどうなりますか?
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長期入院など特別な事情で1歳までに接種できなかった場合、その事情がなくなった日から2年以内で、4歳になるまでであれば定期接種を受けることができます。該当する場合は医療機関にご相談ください。
おわりに
BCG ワクチンは、お子様を結核から守るための大切な予防策です。この小さな注射が、お子様の健やかな成長を支える一助となります。接種に関してご不明な点があれば、いつでも当クリニックにご相談ください。
- 当クリニックは、科学的な根拠に基づいた正確な情報提供と、お子様一人ひとりに合わせた丁寧な対応を心がけています。