肺炎球菌ワクチン
高齢者の健康を守る盾
はじめに:目に見えない脅威から身を守る
空気中を漂う目に見えない敵。それが「肺炎球菌」です。
この小さな細菌が引き起こす肺炎は、高齢者にとって決して軽視できない脅威です。実は日本人の死因の第 5 位が肺炎であり、その多くが肺炎球菌によるものだということをご存知でしょうか?
「風邪だと思っていたら、あっという間に肺炎に…」
「もっと早くワクチンを接種していれば…」
こんな後悔をしないために、今日は肺炎球菌ワクチンについてわかりやすくお伝えします。
肺炎球菌とは?意外と身近な危険な細菌
肺炎球菌は、私たちの身の回りに普通に存在している細菌です。実は、日本人の高齢者の約 3~5%の方の鼻や喉の奥にこの菌が常に住み着いています。
普段は無害に共存していることが多いのですが、体力が低下したり、風邪をひいたりすると、この菌が肺に侵入。そして気管支炎や肺炎、さらには血液中に入り込んで敗血症という命に関わる重い病気を引き起こすことがあります。
特に 65 歳以上の方は、免疫力の低下により、この菌から引き起こされる感染症のリスクが高まります。
ワクチンという「盾」の効果
肺炎球菌には実に 90 種類以上もの「血清型」と呼ばれる種類があります。その中でも特に重症化を引き起こしやすい 23 種類に対応したのが、「ニューモバックスNP」というワクチンです。
このワクチンは、侵襲性肺炎球菌感染症(血液や髄液など通常は菌がいない場所に肺炎球菌が侵入する重症な状態)を約 40%予防する効果があります。
言い換えれば、ワクチン接種で重症肺炎のリスクを半分近く減らせる可能性があるのです!
ワクチン接種の対象者:あなたは該当する?
肺炎球菌ワクチンの定期接種(公費助成あり)の対象は以下の方々です:
- 65 歳の方
- 60~64 歳で、心臓・腎臓・呼吸器に重い障害がある方
- 60~64 歳で、HIV 感染症により免疫機能が低下している方
ご注意ください
過去に 23 価肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス NP)を接種したことがある方は、定期接種の対象外となります。
ワクチンは安全?気になる副反応
どんなワクチンにも副反応の可能性はありますが、多くの場合は軽度で一時的なものです。
よくある副反応:
- 接種部位の痛み、赤み、腫れ
- 発熱
- だるさ、頭痛
- 筋肉痛
稀に重い副反応(アナフィラキシーなど)が報告されていますが、その頻度は非常に低いとされています。気になる症状がある場合は、すぐに医師にご相談ください。
最新情報:選べるようになった肺炎球菌ワクチン
最近では、従来の 23 価ワクチン(PPSV23)だけでなく、新しいタイプの結合型ワクチンも使えるようになりました。
- 23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)
定期接種で使用される一般的なワクチン(ニューモバックス NP) - 20 価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)
より長く効果が持続する可能性がある新しいワクチン(プレベナー20) - 15 価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)
接種後、約 1 年後に PPSV23 の追加接種が推奨される(バクニュバン))
結合型ワクチン(PCV15 や PCV20)は任意接種ですが、より長期間の効果が期待できる可能性があります。
接種を受ける前に
接種を受ける際は、以下の点にご注意ください:
- 発熱している場合は接種を避けましょう
- 過去のワクチンでアレルギー反応が出た方は医師に相談してください
- 妊娠中または妊娠の可能性がある方は事前に相談が必要です
- 持病のある方は、かかりつけ医に相談してください
まとめ:賢い選択で健やかな毎日を
「備えあれば憂いなし」ということわざがあります。肺炎球菌ワクチンの接種は、まさに健康への備えといえるでしょう。
特に 65 歳を迎えられた方は、定期接種の機会を逃さないようにしましょう。自治体からのお知らせをチェックし、当クリニックにもぜひご相談ください。
健やかな毎日は、こうした小さな予防の積み重ねから生まれます。あなたの大切な人生を守るために、肺炎球菌ワクチンについて、ぜひ一度お考えください。
- 当クリニックでは肺炎球菌ワクチンの接種を行っています。ご不明な点やご相談は、お気軽にお問い合わせください。