先天性風疹症候群(CRS)について
ー妊娠中の風疹感染からお子さまを守るためにー
風疹は「三日はしか」とも呼ばれる感染症ですが、特に妊娠初期の女性にとっては注意が必要です。免疫のない女性が妊娠初期に風疹に感染すると、そのウイルスが胎児に伝わり、「先天性風疹症候群」という状態を引き起こすことがあります。
今回は、この症候群についてわかりやすくご説明します。
知っておきたい!先天性風疹症候群の基礎知識
先天性風疹症候群とは?
先天性風疹症候群(CRS)は、お母さんのお腹の中で赤ちゃんが風疹ウイルスに感染することで起こる症状の総称です。特に妊娠初期(最初の 3 ヶ月間)の感染が最もリスクが高いとされています。
三大症状を知る
先天性風疹症候群には、次の三大症状があります:
- 先天性心疾患(心臓の異常)
- 難聴(聴覚障害)
- 白内障(目の水晶体の濁り)
必ずしもこれら 3 つの症状がすべて現れるわけではなく、その他にも発育の遅れや、網膜の異常などさまざまな症状が見られることがあります。
感染のリスクとは
妊婦さんの感染時期によってリスクは変わります:
- 妊娠 1 ヶ月:50%以上
- 妊娠 2 ヶ月:約 35%
- 妊娠 3 ヶ月:約 18%
- 妊娠 4 ヶ月:約 8%
また、お母さんに症状が現れない「不顕性感染」の場合でも、赤ちゃんに影響が出ることがあります。
どうやって診断するの?
先天性風疹症候群が疑われる場合、以下のような検査を行います:
- 赤ちゃんの血液検査(特殊な抗体の検査)
- 咽頭ぬぐい液や尿からのウイルス検出
- 聴力検査
- 心臓の検査(エコーなど)
- 目の検査
これらの検査を通じて、総合的に診断を行います。
治療について
残念ながら先天性風疹症候群自体を「治す」治療法はありませんが、それぞれの症状に対する治療が可能です:
- 心臓の異常:軽度であれば自然に治ることもありますが、手術が必要な場合もあります。
- 白内障:手術で濁りを取り除くことができます。視力発達のために早期治療が望ましい場合があります。
- 難聴:補聴器や人工内耳の使用、聴覚に特化した教育支援などで対応します。
予防が最も大切!
先天性風疹症候群は予防が可能です!特に以下の点に注意しましょう:
ワクチン接種がカギ
妊娠を希望する女性は、妊娠前に風疹の抗体検査を受け、免疫が不十分であればワクチン接種を受けることをお勧めします。ワクチン接種後 2 ヶ月間は妊娠を避けるよう注意が必要です。
男性も重要な役割を
男性も風疹の感染源になりうるため、特に 1962 年~1979 年生まれの男性(定期接種を受ける機会がなかった世代)は、原則無料で受けられる風疹ワクチン接種制度を利用しましょう。
妊婦さんへのアドバイス
妊娠中で免疫が不十分な方は:
- 人混みを避ける
- 外出時はマスクを着用する
- 風疹が流行している場所への外出を控える
先天性風疹症候群をゼロに
日本では 2012~2014 年の風疹流行時に 45 例の先天性風疹症候群が報告されました。その後しばらく報告はありませんでしたが、2018 年の流行に伴い 2019 年に新たな症例が確認されています。
「先天性風疹症候群の赤ちゃんをゼロに」という目標を達成するためには、社会全体での取り組みが必要です。ワクチン接種や抗体検査を受けることは、自分自身だけでなく、これから生まれてくる赤ちゃんを守ることにもつながります。
- 当クリニックでは風疹の抗体検査やワクチン接種を行っております。ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
- 妊娠を計画されている方、妊婦さんのパートナーの方々も、ぜひ一度検査をご検討ください。