狭心症について
患者さんのための基礎知識
「胸が締め付けられる」その痛みの正体
胸がギュッと締め付けられるような痛み——。
それは単なる疲れではなく、あなたの心臓からのSOSかもしれません。
狭心症は、心臓に栄養や酸素を届ける「冠動脈」という血管に問題が生じることで起こる病気です。
健康な心臓は常に休むことなく働き続けていますが、その源となるエネルギーが十分に届かなくなると、心臓は「痛み」という形で私たちに警告を発します。
狭心症の種類 — 発作のパターンで見分ける
狭心症は大きく分けて「安定狭心症」と「不安定狭心症」の2種類に分けられます。
安定狭心症
予測できるパターンで痛みが現れるタイプです。さらに以下の2つに分類されます:
労作性狭心症
階段の上り下りや重い荷物を持ったときなど、体を動かして心臓に負担がかかったときに痛みを感じます。休憩すると自然に治まることが特徴です。
冠攣縮性狭心症
血管が一時的に強く縮むことで起こります。朝方や夜間など安静にしているときに突然痛みが現れるのが特徴です。タバコやお酒、ストレスが引き金になることも。
不安定狭心症
これは要注意!安定狭心症と違い、予測できない痛みが頻繁に現れ、安静にしていても発作が起きることがあります。心筋梗塞の一歩手前の状態で、緊急の処置が必要です。
狭心症の原因 — リスク要因を知っておこう
狭心症になりやすい人には、いくつかの共通点があります:
- 喫煙習慣 :タバコは血管を傷つけ、動脈硬化を進行させます
- 高血圧 :血管への負担が大きくなります
- 糖尿病 :長期間の高血糖は血管を傷つけます
- 脂質異常症:余分なコレステロールが血管内に蓄積します
- 肥満 :心臓への負担が増加します
- ストレス :血圧を上昇させ、心拍数を増加させます
- 家族歴 :狭心症になりやすい体質は遺伝することもあります
狭心症の診断 — 様々な検査で見極める
胸痛があるからといって、必ずしも狭心症とは限りません。正確な診断のために、医師はいくつかの検査を行います:
基本的な検査
- 問診と身体診察:症状や生活習慣について詳しくお聞きします
- 血液検査 :心臓の状態を示す特殊なタンパク質などを調べます
- 心電図検査 :心臓の電気的活動を記録します(安静時と発作時)
より詳しい検査
- 運動負荷試験:トレッドミルなどで運動してもらい、心臓の反応を見ます
- 心エコー検査:超音波で心臓の動きや構造を観察します
- 心筋シンチグラフィ:特殊な薬剤を使って心臓の血流を調べます
- 冠動脈CT検査:冠動脈の詳細な画像を得られる非侵襲的な検査です
- 心臓カテーテル検査:冠動脈の狭窄の程度を直接確認できる検査です
狭心症の治療 —— 包括的なアプローチ
狭心症の治療は、薬物療法と生活習慣の改善、必要に応じて手術的治療を組み合わせて行います。
薬物療法
- ニトログリセリン:発作時の即効性のある薬で、舌の下に入れると血管を広げて症状を和らげます
- Ca拮抗薬:血管を広げて血圧を下げる効果があります(特に冠攣縮性狭心症に有効)
- β遮断薬:心拍数と血圧を下げ、心臓の負担を軽減します
- 抗血小板薬:血液の固まりやすさを抑え、血栓の形成を防ぎます
生活習慣の改善
- 禁煙
- バランスの良い食事(減塩、脂質制限)
- 適度な運動(医師の指導のもとで)
- ストレス管理
- 適正体重の維持
手術的治療
症状が薬でコントロールできない場合や、重度の冠動脈狭窄がある場合には以下の治療を検討します:
- カテーテル治療(PCI):風船やステントという金属の網で狭くなった血管を広げます
- 冠動脈バイパス手術(CABG):狭窄部分を迂回する新しい血管の道を作ります
日常生活での注意点
狭心症と診断されても、適切な治療と生活習慣の改善で、多くの方が充実した日常生活を送っています。以下のポイントに注意しましょう:
- 処方された薬は指示通りに服用する:特にニトログリセリンは常に携帯しましょう
- 過度の運動や極端な温度変化を避ける:特に寒い日の朝は要注意です
- 食べ過ぎに注意する:満腹になると心臓に負担がかかります
- 定期的な検診を受ける:症状の変化があれば早めに相談しましょう
発作が起きたらどうする?
- すぐに活動を中止し、安静にする
- 医師から処方されているニトログリセリンを使用する
- 5分経っても症状が改善しない場合は、再度ニトログリセリンを使用する
- それでも改善しない、または症状が悪化する場合は救急車を呼ぶ
- 私たちのクリニックでは、最新の知見と技術を活かし、患者さんお一人おひとりの状態に合わせた最適な治療方針をご提案します。
胸の痛みや不快感でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
早期発見・早期治療が、あなたの心臓を守る第一歩となります。