労作性狭心症
あなたの心臓が発するSOSサイン

「階段を上ると胸が痛む…」それ、ただの疲れかもしれません。でも、もしかしたら心臓からのメッセージかもしれません。

 狭心症とは?心臓からの「ちょっと待って」というサイン

皆さんは「狭心症」と聞くと、どんなイメージをお持ちでしょうか?
突然胸を押さえて倒れる…そんな劇的な場面を想像される方もいるかもしれませんね。
実は狭心症には大きく分けて2種類あります。今回は「労作性狭心症」についてお話しします。

労作性狭心症:運動すると現れる胸の痛み

労作性狭心症は、その名の通り「労作=体を動かす」ときに症状が出る狭心症です。階段の上り下り、急ぎ足での歩行、重い荷物を持つなど、ちょっとした運動で胸に痛みや圧迫感を感じることがあります。これが労作性狭心症の特徴的な症状です。

 なぜ運動すると胸が痛くなるの?

想像してみてください。水道管に錆がたまって細くなった状態を。普段の水使用なら問題ないけれど、たくさんの水を一度に流そうとすると…?そう、水は十分に流れませんよね。

心臓の血管(冠動脈)も同じことが起こります。動脈硬化によって血管の内側に「粥腫(じゅくしゅ)」という脂質のかたまりが溜まり、血管が狭くなっているのです。

安静にしている時は問題なくても、運動して心臓が活発に動き出すと、十分な血液(酸素)が供給できなくなり、心臓が「酸素が足りない!」と悲鳴をあげます。その信号が「胸の痛み」として伝わってくるのです。

「動脈硬化」って何?血管の"さび"と"硬化"

動脈硬化とは、血管が年齢とともに硬くなり、弾力性を失っていく状態です。
血管の内側に脂質やコレステロールなどの「粥腫」がたまり、やがてカルシウムが沈着して石灰化します。
これは長い年月をかけて少しずつ進行するため、いつの間にか血管が狭くなってしまうのです。

あなたは大丈夫?労作性狭心症になりやすい人の特徴

労作性狭心症は、主に以下の方に多く見られます: 

  • 年齢が高い方:男性は50〜60代から、女性は60〜70代から増加
  • 生活習慣病がある方 :高血圧、糖尿病、高脂血症など
  • 喫煙習慣がある方
  • 運動不足の方
  • ストレスの多い生活を送っている方

 狭心症と心筋梗塞の違い :「渋滞」と「通行止め」

労作性狭心症と心筋梗塞の違いは、血流の状態にあります。

  •  狭心症   :血管が狭くなり血液の流れが悪い(=渋滞状態)
  • 心筋梗塞 :血管が完全に詰まり血液が流れなくなる(=通行止め状態)

狭心症を放置すると心筋梗塞に進行するリスクがあります。心筋梗塞は心臓の筋肉が壊死してしまう重篤な状態です。だからこそ、狭心症の段階で適切な治療を受けることが非常に重要なのです。

 狭心症の前兆サイン:あなたの身体は教えてくれている

冠動脈が約75%以上狭くなると、狭心症の症状が現れ始めます。
初期は激しい運動時のみ症状が出ますが、進行すると軽い動作でも、さらに悪化するとじっとしていても発作が起こるようになります。
このような状態を「不安定狭心症」と呼び、心筋梗塞の一歩手前の危険な状態です。

検査と診断:心臓の"道路状況"を確認する

労作性狭心症の診断には、心臓CT検査が最も一般的です。これにより、冠動脈の狭窄の有無や程度を画像で確認することができます。その他にも様々な検査方法があり、状況に応じて適切な検査が行われます。

治療方法:3つのアプローチ

労作性狭心症の治療は主に以下の3つです:

  1. 薬物療法   :血管を広げたり、血液をサラサラにしたりする薬を使用
  2. カテーテル治療:風船やステントで狭くなった血管を広げる
  3. バイパス手術 :詰まった血管の代わりになる新しい血液の通り道を作る

予防と日常生活:心臓に優しい生活習慣

狭心症の予防には日常生活の見直しが大切です:

  1. バランスの良い食事(野菜たっぷり、塩分控えめ)
  2. 適度な運動(無理なく続けられるもの)
  3. 禁煙
  4. 十分な睡眠とストレス管理
  5. 定期的な健康診断

大切なこと:自分の身体のサインを見逃さない

狭心症の発作は通常5〜10分程度で治まることが多いため、「たまたま」と思って放置してしまいがちです。しかし、これは心臓からの重要な警告サインです。

「胸の痛みや圧迫感」「息切れ」「肩や腕、あごへの放散痛

このような症状を感じたら、我慢せずに早めに医療機関を受診しましょう。

まとめ :あなたの心臓を長持ちさせるために

労作性狭心症は、早期発見・早期治療が何よりも大切です。

  • 定期的な健康診断を受け、気になる症状があればすぐに当クリニックにご相談ください。
  • あなたの心臓は、一生懸命に働き続けてくれています。その声に耳を傾け、大切にしてあげましょう。