フレイルとは?
健康寿命の鍵を握る「脆弱化」の正体
日本の認知症研究を支える
「生きた教科書」
「最近、疲れやすくなった」
「階段の上り下りが少しきつい」
「体重が減ってきた」
こんな変化に心当たりはありませんか?これらは年齢とともに自然に現れる変化と思われがちですが、実は「フレイル」という状態のサインかもしれません。
フレイル ― 元気と介護の間に潜む「危険地帯」
フレイルとは、英語の「Frailty(虚弱)」に由来する言葉で、健康な状態と要介護状態の中間にある段階を指します。
わかりやすく例えるなら、フレイルは「崖っぷち」のような状態。健康という安全地帯から一歩踏み外すと、要介護という谷底に落ちてしまう危険な場所なのです。しかし、この段階で適切に対処すれば、再び健康な状態に戻ることができます。
フレイルの3つの顔 ― 身体・心・社会のつながり
フレイルの特徴は、次の3つの要素が複雑に絡み合っていることです。
1.身体的フレイル
- 体重が知らない間に減少している
- 握力が弱くなった
- 歩くスピードが遅くなった
- すぐに疲れてしまう
- 日常の活動量が減っている
2.精神・心理的フレイル
- 何をするのも面倒と感じる
- 物忘れが増えた
- 気分が沈みがちである
- 楽しめることが減った
3.社会的フレイル
- 人との交流が減った
- 外出する機会が少なくなった
- 会話する相手がいない日が増えた
- 地域の活動に参加しなくなった
これらは「ドミノ倒し」のように連鎖します。例えば、ご近所づきあいが減ると(社会的フレイル)、会話や外出の機会も減り、その結果、体を動かす機会も減って筋力が低下し(身体的フレイル)、さらに気持ちも沈みがちになる(精神的フレイル)という具合に、悪循環に陥りやすいのです。
フレイルかどうか見分けるには?
日本では「J-CHS基準」という判断基準が使われています。次の5つのうち、3つ以上当てはまる場合は「フレイル」、1〜2つの場合は「プレフレイル」と考えられます。
- 意図せぬ体重減少:1年間で4.5kg以上、または5%以上減った
- 疲労感 :何をするのも面倒だと週に3〜4日以上感じる
- 筋力低下 :握力が男性26kg未満、女性18kg未満
- 歩行速度の低下 :通常より歩くのが遅くなった
- 身体活動量の低下:日常的な活動が減った
ふくらはぎの周囲が男性34cm未満、女性32cm未満も、筋肉減少の目安となります。
フレイルを改善する3つの柱
フレイルは早期発見と適切な対応で改善できます。
1.栄養をしっかり摂る
- たんぱく質を意識して摂る(肉、魚、卵、大豆製品など)
- 1日3食、規則正しく食べる
- 噛む力や飲み込む力が弱い方は、食材の形状を工夫する
2.適度に体を動かす
- ウォーキングなど有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせる
- 「ちょっときつい」と感じる強度が効果的
- 継続することが大切(無理のない範囲で毎日少しずつ)
3.社会とのつながりを保つ
- 家族や友人との交流を大切にする
- 地域のサロンや趣味のサークルに参加する
- ボランティア活動など、誰かの役に立つ活動をする
意外と知られていない!フレイルの真実
- 女性の方がリスクが高い :もともと筋肉量が少ないため、フレイルになりやすい傾向があります。
- 薬の影響も大きい :複数の薬を飲んでいると(ポリファーマシー)、副作用でフレイルが進むことも。
- 若いうちからの備えが大切 :筋肉量は20〜30代がピーク。この時期の生活習慣が将来を左右します。
- 回復の可能性がある :フレイルは適切なケアで改善できる可逆的な状態です。
家族ができるサポート
大切な家族のフレイル予防・改善をサポートするポイント:
- 食事の内容に気を配る(特にたんぱく質が十分か)
- 一緒に散歩や軽い運動をする習慣をつくる
- 会話の機会を増やし、社会とのつながりを保つ手助けをする
- 変化に気づいたら早めに医療機関に相談する
まとめ :フレイルは予防・改善できる!
フレイルは年齢を重ねるとともに誰にでも起こりうる状態ですが、決して諦める必要はありません。早期発見と適切な対応で、いつまでも自分らしく活動的な生活を送ることができます。
- 気になる症状があれば、ぜひ当クリニックにご相談ください。一人ひとりの状態に合わせた適切なアドバイスと支援を提供いたします。