床ずれ(褥瘡)を知って、
大切な人を守りましょう
今回は「床ずれ」とも呼ばれる褥瘡(じょくそう)についてお話しします。
床ずれって何?
床ずれは、長時間同じ姿勢でいることで、体の一部に圧がかかり続け、その部分の血液の流れが悪くなることで起こる皮膚のトラブルです。特に、寝たきりの状態や車いす生活を送っている方に起こりやすい症状です。
「床ずれ」という名前から、ベッドで寝ている時だけに起こると思われがちですが、実は車いすに座っている時にもお尻や背中に起こることがあるんですよ。
どこにできやすいの?
床ずれができやすい場所は、骨が出っぱっている部分の皮膚です。特に以下の部位に注意が必要です:
- お尻(おしり)
- 腰の骨の周り
- かかと
- 肘(ひじ)
- 肩甲骨
- 背骨に沿った部分
これらの部位は、体重が集中しやすく、皮膚と骨の間に挟まれる組織が少ないため、血流が滞りやすいのです。
床ずれの症状 ~早期発見のために~
床ずれは進行すると治療が難しくなるため、早期発見がとても大切です。次のような変化に気をつけましょう:
初期症状(要注意!)
- 皮膚が赤くなる(特に骨の出っぱった部分)
- 赤みが指で押しても消えない
- 熱っぽくなる
- 小さな水ぶくれができる
初期段階で適切なケアをすれば、数日から1~2週間程度で回復することもあります。
進行した症状
- 皮膚が剥がれて浅い傷になる
- 水ぶくれが破れて中身が出てくる
- 傷が深くなり、筋肉や骨まで達することも
- 黒くなったり、悪臭がしたりする(組織が壊死している状態)
床ずれができやすい人は?
- 長時間ベッドで過ごす方
- 車いす生活の方
- 自分で体の向きを変えられない方
- 高齢者の方
- 栄養状態が良くない方
- 糖尿病や循環器疾患のある方
- 皮膚が弱くなっている方
- 尿や便の失禁がある方
床ずれを予防するには?
1.定期的な体位変換
同じ姿勢で長時間いることを避け、少なくとも2時間に1回は体の向きを変えましょう。
体位変換のコツ:
- 寝返りができない方は、枕やクッションを使って30度くらい傾けてあげましょう
- 仰向け→右側臥位→仰向け→左側臥位と交互に変えるとよいでしょう
- 急に引っ張ると皮膚を傷つけることがあるので注意!
2.適切なマットレスやクッションの利用
- エアマットレス
- 高反発マットレス
- 車いす用のクッション
これらは体圧を分散し、一箇所に負担がかからないようにしてくれます。
3.清潔を保つ
- こまめな清拭(せいしき)でさっぱりと
- 汗や排泄物はすぐに拭き取り、清潔に
- 優しく丁寧に拭きましょう(ゴシゴシこすらない!)
- 保湿クリームで皮膚を保護
4.栄養バランスを整える
床ずれの予防と治療には、良質なタンパク質やビタミン、ミネラルが欠かせません。
特に大切な栄養素:
- タンパク質(肉、魚、卵、大豆製品など)
- ビタミンC(柑橘類、緑黄色野菜など)
- 亜鉛(牡蠣、レバーなど)
- 適切な水分摂取
床ずれができてしまったら?
早めに医師や看護師に相談しましょう。自己判断での対応は症状を悪化させることがあります。
初期の対応:
- 圧迫を避ける(その部位を下にして寝ない)
- 清潔に保つ
- 適切なドレッシング材や軟膏の使用(医師の指示に従いましょう)
床ずれが怖い理由
床ずれは、単なる皮膚の問題ではありません。悪化すると命に関わることもあります。
- 感染症のリスク増加
- 痛みによる生活の質の低下
- 治療期間の長期化
- 重症化すると敗血症や骨髄炎の危険も
介護をする方へのメッセージ
大切な人の介護をされている皆さん、毎日本当にお疲れ様です。床ずれのケアは大変ですが、早期発見と適切なケアで防ぐことができます。
「予防は最良の治療」です。
日頃のちょっとした気づきが、大切な人を守ることにつながります。一人で抱え込まず、医療専門家に相談しながら、ご自身の健康も大切にしてくださいね。
一緒に床ずれを予防して、健やかな毎日を過ごしましょう!
- 何かご不明な点がございましたら、いつでもお問い合わせください。
当クリニックスタッフ一同、皆様のお力になれることを楽しみにしております。