ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)
~黄色ブドウ球菌の大冒険~

「やけど?」じゃないのに
「やけど?」みたいな不思議な病気

今日は少し変わった名前の皮膚の病気「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」についてお話しします。
難しい名前ですが、「SSSS と覚えてね」と子どもたちには伝えています。

小さな常連客「黄色ブドウ球菌」ってどんな子

私たちの肌には、目に見えない小さな「お客さん」がたくさん住んでいます。その中に「黄色ブドウ球菌」という常連さんがいるんです。

普段はとっても行儀がよく、私たちの肌の上でひっそりと暮らしています。鼻の中や髪の毛の周り、皮膚のあちこちに住んでいて、ほとんどの時間は何も問題を起こしません。

でも時々、この常連さんが「悪さをしよう!」と思いついてしまうことがあるんです。特に、お子さまの体力が少し弱っているときや、肌に小さな傷があるとき…。
そんなときに黄色ブドウ球菌は「毒素パーティー」を開いてしまいます。

「毒素パーティー」で何が起こる?

黄色ブドウ球菌が出す「表皮剥脱毒素」という特別な物質は、私たちの皮膚の接着剤である「デスモグレイン 1」をターゲットにします。

これは、まるで肌という壁紙の糊を溶かしてしまうような作用。その結果、肌がペロンとはがれやすくなってしまうのです。まるで火傷(やけど)のように見えることから「熱傷様」と名付けられました。

特におもしろいのは、この毒素がヒーローのように(?)血液の流れに乗って全身を旅すること。そのため、菌がいる場所だけでなく、体のあちこちで皮膚トラブルが発生するんです。

どんな子がなりやすい?どんな症状が出る

この病気は特に 6 歳以下のお子さまに多く見られます。大人は肌の防御システムがしっかりしているので、めったにかからないのですが、小さなお子さまはまだ肌の防御システムが発達途中。

最初は軽い発熱や、のどの痛み、目が赤くなるなどの症状が現れます。そのあと、お肌が全体的に赤くなり、特に体の動く部分(口の周り、わきの下、首、おむつの当たる部分など)が影響を受けやすいんです。

皮膚がスルッとはがれやすくなり、赤い部分を軽くこするだけではがれることも。これを医学的には「ニコルスキー現象」と呼びますが、子どもたちには「お肌がおふとんから出たがっているよ」と説明しています。

お医者さんはどうやって見分ける?

この病気を見分けるには、まず症状をよく観察します。特に、皮膚の状態や「ニコルスキー現象」があるかどうかがカギになります。

必要に応じて小さな皮膚のサンプルを採取して顕微鏡で調べたり、血液検査で炎症の程度を確認したりすることもあります。でも、お子さまに負担をかけないよう、最小限の検査で済ませることを心がけています。

治療は「菌退治作戦」!

治療の主役は「抗生物質」です。これは黄色ブドウ球菌を退治して、毒素パーティーを強制終了させる特効薬。内服薬や点滴で使用します。

また、はがれてしまった皮膚は、まるでお城の壁が崩れたように外敵から体を守れなくなっています。そのため、清潔なガーゼで保護したり、特別な軟膏を塗ったりして、新しい皮膚が元気に育つのを助けます。

広い範囲の皮膚がはがれてしまった場合は、入院して集中的なケアが必要になることも。特に小さなお子さまほど、脱水や二次感染のリスクが高いため、注意深く見守る必要があります。

予防と注意点 〜お肌を守る騎士になろう!〜

黄色ブドウ球菌は私たちの周りのどこにでもいる常連さん。完全に避けることはできませんが、以下のポイントに気をつけると予防に役立ちます:

  1. 清潔の魔法:こまめな手洗いは最強の予防法。特にお子さまが小さな傷や擦り傷
  2. 早期発見の目:皮膚に赤みやただれが広がってきたら、早めにクリニックへ。早期治療が大切です。
  3. 元気パワーアップ:バランスの良い食事と十分な睡眠で、お子さまの免疫力を高めましょう。体の中の「お肌防衛隊」が強くなります。
  4. 共有注意報:タオルやシーツの共有は避けましょう。特に家族に皮膚トラブルがある場合は要注意です。

最後に 〜お肌の冒険はハッピーエンドへ

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群は、確かに見た目は怖いですが、早期に適切な治療を受ければ、多くの場合 2 週間程度で完治します。

お子さまの皮膚に異変を感じたら、「様子を見よう」とせず、当クリニックにご相談ください。